加藤夏海(26)

ー今回この写真を自分の人生で一番大切なもの、宝物として選んできたその理由を教えてください。
教えてください。
えーっと、選んだのは散歩の写真なんですけど。
えっと、散歩が人生で一番大事なことだよ。えっとね、うーんなんかさ、散歩が好きだなって思ったのは中学生ぐらいになんですけど。なんか無駄に、あ、てか散歩がいいのは、私考え事する時に止まってるとあんまり思考がまとまらなくて。歩いてる時の方が考えが、けっこう良くまとまるのね。から、その考え事する時にいつも歩いてて、歩きながら考え事してるから。してます。
で、まあなんか、うーん、なんか考えてる、考えて頭使ってる時がなんか一番生きてるみがあるというか、生きてるみがあるという感じがするので、人生で一番大事かなと思った。


ーその時間が。
なんかその、友達と遊んだりとか人と話したりとかしてるのすごく自分の発想になかったこととか得られるから、すごく大事なんだけど。
なんか最終的には自分で問いを立てて、それを自分で考え切るっていうのが、なんか、一番手ごたえがあるっていうのもあって、1人で考え事している時が一番好きっていうのがあります。
で、足す、あと1人でなんか座って考えてるとあんまりいい方向に考えが行かなくって、歩いてるとなんかこうやっていろんな人がさ、こう、いろんなことをこう、やったりしてるじゃないですか。
おいかけっこしたりとか、犬と散歩したりとか、ああやっておばあちゃんが石の上にちょっと腰掛けてたりとかするのとか見ると、なんかみんな1人1人、人生あんだなって思って。すごい壮大な気持ちになる。そんな感じですかね。


ーそれは今、中二ぐらいから散歩し始めたと言ってたけど、どのタイミングで大切だなって風に思うようになったてのはあるんですか。
ああ、一番大事だなって思い始めたのは、大学生の時で。なんか大学2年生の夏に、なんか本当に色々考えて。色々考えててっていうのが、その時はめちゃくちゃ死ぬのが怖かった時期があって。
で、なんかどうやったら死の恐怖を乗り越えられるかっていうのを考えまくり、その時たまたまバイトがあったんだけど、バイトがたまたまキャンセルになって5日ぐらいなんか暇になったから。家からね、あの茨城の、水戸まで歩いた。3日かけて。
で、そう、で、その時に、水戸まで歩き切った時に、なんかいろいろ考えがまとまった、まとまった訳じゃなくて、なんか落ち着いて、自分の中で。で、なんか、あいいなって思ったその時に。だから散歩するのってすごい大事だな。
散歩って言えないレベルだけど。


ー行脚
行脚だ。
いやそうだよ多分私前世飛脚だと思う。


ーか、参勤交代。
それかな、なんか水戸まで歩いた時が一番長く歩いたから、その時かなあ。一番。


ー大事だなあって感じた。
うん。なんとなくすっきり、すっきりてか納得感があったし。
そっからなんかいろいろ考え出すと歩くようになって、町田から鎌倉まで歩いたりとか、色々、今も会社から家まで歩いたりとか、してます。


ー積極的にそれはやろうとしている。
なんか、てか自然と歩きたくなっちゃう。
歩くようになってるって言うかさっきも、もう足がうずうずしてる。なんかもう元々足がすごいわりと健脚だからずっと歩いてられるっていうのもあるし。あとなんかなんだろう。水戸まで歩いた時にすごい思ったのが、なんかただ歩くってさ、めっちゃ簡単じゃないですか、どうして、右足と左足を交互に出せばいいだけで。
なんかただそれを繰り返してるだけで、電車で行くような距離も、自分一人だけで行けるって思ったら、なんかすごい、尊くねえか。尊くねえかってかあのなんか、って思ったらなんか、何事も右足と左足を交互に出すぐらいコツコツとやってれば、なんか遠くまでいけるんじゃないかなって思った。
という感じでしょうかねえ。


ーその時ぐらいから、自分の中でこう一番大切だなって思い始めた。ずっと変わらず。
そう。
だし、なんか散歩に友達と一緒に散歩するのも好きだし。なんか、なんかカフェとか向かい合って話すのって、なんだろう、結構緊張するんだけど。なんか来た言葉を全部受け止め返さなきゃいけないじゃん。受け止めてこうぱってやんなきゃいけないけど。
歩いてるとこうやって目に入ったものとかを、即時に共有できるというか、まあ共有してるのかな。って思って。なんだろう。
なんか散歩好きだなって思い始めてから、散歩のなんか良さが、もっと目に付くようになったかな。


ーなんかいろんなものとか思い出とかそういうものもある中で、日常にある動作に近いものを選んだってのはなんかあるんですか。
そうだねえ。
なんか、一番大事なものって考えた時に、なんか物とかだと、なんか他者が混ざるというか、いう感じがして。色々思い浮かべたんだけど。
ものってなるとやっぱりそう、なんかどこかしら他者が入ってくる感じがして。自分にとって一番人生で大事なものの中に、なんか他者はそんなに存在し得ないと言うか。なんか、て言うとなんか寂しく聞こえるけど、そうではなくて。
その自分の人生をまっとうするっていう、なんか意味で、あんまり人を交えていけないって思ってて。この。
うーんなんて言うのかな、言い方が難しいんだけど。え、どうなんだろう。

なんだろう、うん、そうそう。なんか、自分で、うーん、そうそう、なんとなくそう思ってる部分があって。
だから、その、うん物選んじゃうと何かしらこう人が入ってくるなと思って。なんか、自分の人生の中で、今まですごく大事だなって思ってきたものの中で、うーんなんか、一番、大事にしてきた時間だし、かつ、その本当に他の他人が入ってきてない、他者が入ってきてないもの。考えた時に散歩かなって思った。
うーん、え、どうなんだろう、わかんないけど。
なんで、え、でもさ、このさ、あの企画をやってるのはさ、なんかあれなの。もうちょっとこう他者性が必要なの。
え、だったらなんかさ、結構お門違いじゃん。


ーそれは人それぞれで全然。他者性がある人もない人もいるんじゃないかな。
いる。そっか。じゃあ大丈夫か。


ーうん。散歩ってのはじゃあ、一言で言うと、自分にとってどういうものなんですか。

散歩って言うのは、一言で言うと、相棒。人生の相棒。


ー写真がこれだっていうのは、何か理由があるんですか。
あーなんかそれはなんか、あ、そうだよね、そうそう。それはそう。


ーいろんな多分撮られてると思うんですけど。
それは日比谷公園、日比谷駅の改札を出た、階段を出たところにあった光なんだけど。
















なんか、結構そういう、あ、そう、散歩してていいなって思うのは、なんか、ただそこにある景色が本当に美しいと思う時が、たくさんあって。なんか、それもすごく綺麗だなと思って撮ったんだけど。
なんか、特別な、なんだろうな、イルミネーションとか、すごい綺麗な紅葉とかじゃなくても、なんかただその時の天気と光と物体があるだけで、本当になんか綺麗な景色と言うか、光景が日常の中に沢山あるなと思ってんだよね。
で、なんか1番こう、なんだろうな、純粋に光だけで綺麗だなって思ったのが、それだったから、選んだ。あとちょっと光がドアみたいで良いでしょ。


ーおすすめ。
おすすめです。これはね、朝じゃないと撮れない。
これは朝、朝、朝8時くらいに行った休日の。これが、これは、ちょっとおすすめ写真です。


ーここ最近の写真。
これはいつだったかな。去年の秋くらいかな。撮った写真かな。
すごい光が、冬の、秋っても冬の始まりぐらいだったから、光がやっぱり、冬と夏はと大分違うじゃない。冬の強い光ってなんか、冬の強い光はなんか、なんか静かなんだけど、ちょっとこう暑苦しいていうか、静かなんだけどちょっと暑苦しくてうざったくさせる。褒めてんのかって。
なんか結構攻撃的なんだよね。それも好きだし、夏の朝の光は、夏はやっぱり日中暑くなるから朝がそのぶん、静かなんかこう涼しく感じられて。すごくクールな感じ、の光になるし。光は面白いよね。時々刻々と変わる。これは冬の光です。良いです。


ーいい景色に出会えたって意味で、まあそれを散歩を表す写真として。
そう、そう、そうです。なんか、考え事している時の内容とは全然関係ないんだけど、うん、なんかそうなんだよね。なんか散歩してる時って、色々考え事してて。
なんかさっきの死ぬが怖いとか、あと、どうやったらみんなが優しくなれるんだろうとか。あと、なんだろうな。仲、すごい仲良くなっちゃった人と、自分の境界線が見えなくてどうしようとか。なんか色々考え事してるんだけど。
まあ大体なんて言うのかな、うーん、結構その生きるのに必死感が出てきちゃって。


ー自分が。
そう、必死感が出てきちゃって、それはこう眉間にしわ寄せて歩いて考えてんだけど。
なんかそういうさ、綺麗な景色とかがぱって目に入ると、なんか、なんか実存主義突然戻るんだよね。なんかいるだけでいいじゃないかみたいな気持ちになるっていうか。
まあでもなんか、なんて言うのかな。
やっぱり自分は考え続けないと、なんか、いけないと思うと言うか、考えている時が一番実存している感じがするから、考え続けるんだけど。でも、そもそもは存在してるだけでいいじゃないかって思わせてくれる景色があって。
だから良いですね。


ー何か他にこの大切なものについて言っときたいこととか心にあることはありますか。
えーなんだろう。
うーん。散歩したいなあ。最近散歩してないから散歩したいな。
うそ。うそ、先週してた。


ーそしたらちょっと話が変わるんですけど、自分の人生でやりたいこととか、なりたいことでもいいんだけど、夢とか達成したいもの、そういうのがあれば教えて欲しいなと。
えー、やりたいことはさ、あの話してるけどさ、ベンチ作ること。


ーそれが今一番大きい。
そう、やりたいこと。ベンチを作って、町じゅうに置いて、皆が街中で喋るようにすること。が一番やりたいこと。


ーそれはなんでそういう風に思うようになった。
うーん、なんか、はっきりとなんかそうだなって思ったのがきっかけがあって。うーん。
その、近い友人と言うか、で、あの、なんか、家族とも縁を切ってしまって一人で住んでいて、その人がある意味自殺なのかわかんないけど孤独死で死んじゃった事があって。
で、なんか私近くに住んでたんだけど、それを知らなかったのね。で、だいぶ経ってから、まあまあなんかこう近所の警察とか、そういう噂で聞いて、ああそうなんだって思った時に、なんか、なんでこんなに近くに住んでたのに、なんか苦しいことも知らなかったんだろうって思って。
で、なんか、やっぱり、どうしてもこう、東京の生活スピードってすごい速いから、なんか、そういこうちょっとしたおしゃべりって言うのも、なんだか、予約をしないとできないような生活をしてて。
その、それをもっとスピードダウンさせたいなって思うようになって。で、なんかベンチがあったら、そこに座って、ベンチあるってだけで、なんか座る気になって、座って話してたらなんかもっといいことがあるじゃないかなって思うようになった。

で、実際その、イギリスとか、あとあの、ニューヨークのセントラルパークとかも、その孤独という問題を考えた時にベンチっていうソリューションを、に、こうヒントを得て、そのベンチの設置っていうのを積極的にやってたりとかもして。そういうなんか文章とかを読んで。ああ、やっぱりそうじゃないか、確信で。
あとベネズエラのね、お医者さんが精神科医が、その、ベネズエラってやっぱりずっとこう、医療的にそんなに未整備だから、精神科医の数もそんなに患者の数に対してないのね。だから、そのベネズエラの、あの、お医者さんが考えた方法が、そのベンチを置いて、そして近所にいるおばさん達に、そのメンタルヘルスのレクチャーをして。
その、ちょっとこう精神的に参ってるお母さんとかをサポートするっていう方法を考えてやってらっしゃる方がいて。それもすごくこう刺激になって。

なんかあの、こう、なんかあんまり私は社会課題みたいなものを特定化したくないの。誰かの為のとかいうのをなんかあんまり言うのが、あんまり品がいいとも思えてないし。
なんかこう偶然そうなったらいいなって思うから、ベンチを置くってのは、すごくこうユニークでいい方法なんじゃないかなって思って。
やりたい。やりたい。でもそしたら、でも今はベンチを作ることにハマってしまったから、なんかまだあんまりこうスキームとかスケーリングする方法についてはまだあんまり考えてない、かな。


ーじゃあ、ベンチを作りたいっていうその奥には、スピードダウンさせたいみたいなところが。
そう、ある。なんか、なんでも効率良くなってるかもしれないけど、なんかこう、もっと町の中に無意味なものを増やしたいと言うか、無意味でいっぱいにしたいね。
そういうものに対するなんかこう、ある意味抵抗運動的な感じですね。


ーそれはいつまでにとかっていうのはあったりするんですか。ずっとやり続けるみたいなイメージ。
なんか、あんまり逆算的には考えてなくて。まあそう、なんで、結論から言うと逆算で考えてないのでいつまでにってのはないです。で、完全仕事モード時の話し方。ないです。
で、なんか逆にその方が、なんか、自分がそれをやってるらしさが出るかなというか。て言う気もしてて。今はベンチ作るのが楽しくて、なんか、そレをやっていて。
あ、そうそう、なんかあんまり狙ってやりたくないから、自分が楽しいの延長線に変わった、変えられることがあったらいいなって思ってるから、基本的に自分の気持ち優先。
自分の気持ちファースト。やってます。


ーハートドリブンです。
ハートドリブン。そうです。


ースピードダウンさせたいから、ベンチにいきたいは、なんか本を、読んでて。その中になんか色々考えて。
うーん。なんかまあ本読んでることと、あとはなんか本読んで得た知識と、あとはなんか、まあやっぱり感覚的にも、自分の中で、経験としてそうだろうっていう風に思えるというか。
なんか、うーん。なんか大学時代に、まあいくつか研究滞在みたいな感じで、なんかニューヨークとかカナダのトロントとか、アメリカンポートランドとかに何ヶ月かいたんだけど。そん時もやっぱりベンチのある街はちょっとこう、時間がゆっくりしてる感じがしてて。
で、なんか座るところがあるとさ、なんか座ろうって思うと言うか、なんかまず物があることで行動が誘発されると言うか、まあ物のアフォーダンスみたいなものを感じて。
なんか、ニューヨークにいた時も、そのインターン先の人と、なんか仕事が終わった後すぐ帰ればいいけど、なんかそこにベンチあるからコーヒー飲んで座ろうみたいな、のとかがあって。なんか、そういう経験とかもあって、あのスローダウンのためにいいんじゃないかなって思うとか。うん、なんか自分としては納得感がある方法です。


ーなんか夢のことついては何か他に言いたいこととか、思うこととかあったりします。
夢のことは、うーん。まあちょっとあの、そうですね。なんか死ぬ、死ぬ前までにはやりたいから、ざっくりはちょっと考えとくわ。計画を。


ーあとは夢と、今日見せてくれた宝物、大切ものっていうのは、なんかつながりって言うか、関係性がどんな風にあったりするんですか。
ああ、確かに。真逆だもんね、ある意味。あ、でもそんなこともないのか。関係性がなんか、難しいんだけど、なんか。他者との関係って難しいね。
なんか、その宝物は、確かにその、すごくこう他者と交えないようにっていうのすごく意識したけど。その、夢はどちらかと言うと人の役に立ちたいっていう気持ちがあって、なんか、あるんですよね。
いっつも、なんか、自分が楽しいを大事にしなきゃっていうのと、その誰かの役に立ちたいっていうのが、なんか両方いつもあって。うーんでもなんか、本当にそれはどっちもこう同じ気持ちで。

うんだから、つまり単純化すると、利己と利他がどっちもあるんだけど。うーん。でもなんとなく自分の中の感覚的に、やっぱりその自分が楽しくないと嘘になっちゃうって言う感じがするから。自分がすごく、幸せであって、なんか、その自分が楽しくて、自分が集中できるものがあって、その結果誰かの役に立つっていうのが、なんか自分として最終的に理想的な形なんだろうね。
から、うーんそう、そうなんだと思う。宝物が起点、宝物はいつもなきゃいけないもので。まあ夢は、それをこう、最終的にこう発展させていった、まあ理想だから。まあこれからも宝物と一緒に頑張っていきまーす。


ー何か他に全体を通してでも言いたいことがあったり、心にあるものがあったら。
ナッシング。




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