藤咲潤(21)

ーではですね、普通にまあなんでこの写真を宝物として選んだのか。

これは帰り道の写真なんですけども、これ敬語とかじゃなくていい。


ーうん、敬語じゃない方がいいんじゃない。

なんだけど、そう、これは帰り道の中でも、まあ桜並木通るんだけど、ちょうど咲いてる時のキレイな写真で。別に桜が大事とかじゃなくて、この帰り道自体が好きで。
なんかいっつもまあ家帰る時に通る間に、まあなんか楽しいことがあったりとか、その外出先でね、楽しいことがあったりとか、まあなんかつまんなかったりとか、そういうことが起きても、なんか帰り道に、いつも通ってる同じ帰り道で、なんとなく気持ちが落ち着いて玄関に着くみたいな。そのリセットできるというか。
で、そう。俺はタイとかニューヨークとか一応行って、なんかあんま日本にいてもこう、ホーム感がしないわけよ。なんかずっとそこにいる地元の友だちとかあんまいないし。
でも、一応ここの家には小学校くらいからずっと住んでいて、だからなんかその同じ道を、なんか小さいとき母親と一緒に帰ったりとか。まあなんか、そう、小さい頃からの記憶がずっとあって、そこだけはすごいこう誇れるというか、なんかねえ、そう自分の故郷的な道なわけよ。なじみがある。ていうのが一番の理由です。


ーなんかいろいろ海外とかで経験してるから、そういうのかなって思ったけど。
でもやっぱこっち。

うん、こっちだね。なんか、うん、そもそもタイにいた時は、まあそんなに1人で外出したっけ。そもそもこういう駅から歩いて家帰るみたいな感じじゃなくて、うん、あんまり思い出がない。電車とかじゃない。なんかバイクタクシー使っちゃったりとか。
ニューヨークは本当に、学校の隣、寮だからそんなのないし。
一番1人で歩く時間が多いところだった。まあ1人だけじゃなくて、小さい頃からの記憶がずっとある。その帰り道の途中の公園とかで遊んだなとか、そう。大事なんですよねえ。


ーうん。こいつがあってなんかよかったこととかある。変わったこととか。こいつがなかったらみたいな。

こいつがなかったら、いや多分こいつじゃなくてもどこかしら帰り道は絶対あるはずじゃん。そしたら、まあその他のところに愛着を持っちゃうんじゃないかな。
でもけっこう好きだね。桜咲くときれいだし。


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ーなんて表現するんだろうね。宝物。自分の故郷を感じるもの。

故郷。故郷かなあ。いやあうーん。そう、故郷かな。
普通故郷って何。


ー地元とか。

地元とか。一応地元かもしれない。そう。


ーそれはでも帰り道の中でいろいろ考えてきたりしたことが、も、あってってこと。

うん。うん。そういっつも帰り道に、まあ割と音楽聴く方なの。なんかその時の気分にあった音楽かけてぼーっと歩いて帰る。
で、だんだんやっぱ、なんか駐車場とか前あったの。こうパチンコ屋さんの駐車場とか、だんだんなんかそこ工事して、こう老人ホームみたいの建ったりとか。変わってってんなあみたいなのも感じつつ。


ーその変わってんのが悲しかったりしないの。

うん、俺駐車場の方が好きだった。
悲しい、やだ。やなんだけど、すぐ慣れちゃいそう。
いやなんかそう、あれみたい。鉄コン筋クリート。街が変わっていくぜみたいな。


でも、その工事が始まって、なんか大工のおじさんたちが、月曜1限の登校する時に、みんな集まって朝会みたいなしてるみたいな、そういう新しい光景がまたこう馴染んでってとか。ていうのも新しい。どんどん慣れてくね。


ー帰り道のそのいろいろ、なに、その日あったことを考えたりとかっていうのは、けっこうその時間も貴重だったりするの。まあ家帰ってからも考えると思うんだけど。

そうだねえ。けどそう15分くらいかかるの、駅から。とぼとぼ歩いてたら20分くらいかな。まああんま駅近ではないから。なんかぼーっと考えないとつまらないというか、考えちゃうくらい。そう、やっぱその日あったことのハイライト的なものをぼーっと考えるよね。それは、うん、よいことだと思う。なんかそれここでリセットできてたら、家帰ってもうなんか、ただ寝れば終わりみたいな。終わりじゃないけど。そう。


この桜並木の途中に3カ所くらい交差点があるの。で、1回学校の課題で、なんだっけ、映像系の課題で、でも最初なんか写真みたいな感じだったの。写真を撮ってきなさいみたいなのがあって。で、俺その夜中の3時くらいにここらへんの交差点行って、その誰もいない交差点を撮った。
その信号がすごいこうきれいなわけよ、夜。なんか、こう誰もいないから信号だけこうカラフルな光がパッて出てって。そう、そういうの撮ってちょっと評価が上がった。
でも職質された。


ーされるわな。夜中の。
潤にとってはなんて表現するんだろうね。自分をリセットする場所ってだけじゃないもんね。

うーん。リセットするとあとは故郷的な。


ーそっちの方が強いのかな。

長い目で見ると、そっちの方が、そういう意味合いの方が大きいね。


ー日本人としての居場所を感じられる場所みたいな、そんな感じなのかな。

そう、居場所だね、そう。


ー例えばさ、働いたりとか進学したりしたら、ここもまた使わなくなってしまうかもしれない。それはどうなってしまうんだろうね。自分の心の中で。

多分、いやでも多分ここの居場所的なものはそこにとどまったままで、また新しいのが生まれて、でもたまに帰ってきたらそこがまた伸びるというか。小学校の時の、なんかバス通学だったの、バス乗り場もここで、ここの途中にあって、そう、全部これ通ってるんだよね。
これからも先もね、でもやっぱり、なんか将来は、ちょっと外国とか行ってお仕事できたらいいなとか思ってて、それってもしかしたら転々とする感じかもしれないし、そういったときになんか絶対ここの家戻ってきたら、あっ、ってなる大事な場所っぽい。


ーなにを思うんだろうね、その帰ってきた時に。

やっぱ絶対変わってるじゃん。ああ変わっちゃったなってのもあるし。でも一番は、いや懐かしさ。あ、安心感じゃん。


ー自分が思ってたこととか再確認するのかな。その時に。ああっつって、そういえばこんなこと思ってたなとか。

ね、こんな大学生の時に、こんなこと言ってたなとか絶対思う。
どうなんだろう。
やっぱ安心するよ、安心しますよ、本当に。


ーでは次は、自分の夢について。も聞くんですよ。自分がやりたいこととか、叶えたいこととか。まあ、これを、これのために生きれてるとか、ものがあったら。

いやあなんかねえ。今なりたいなって思ってるのは建築家になりたいなって思ってて、なんかそう、なんで建築なんだろう。なんかね、こう建築ってかなんか、そういう考えるプロセスがあるじゃん。ものを作る上で。
建築について、建築じゃない、建築を作るために考えるそのプロセスが何となく自分に合ってるというか、気持ちいいというか、ちょうどいいかなって。なんだろう。


ーそれはいつから。

で、なんか、いや、多分気づいてなくて。最初は普通にデザインが好きで、そのデザインを考えるプロセスが好きで。なんか、まあデザインも一応理にかなってるじゃん。
その、プロセスから生まれて、なんかのためにそれがすごい都合が良くなるように考えてるじゃん。で、高校の時からずっと好きで、デザインが。で、SFC入って、なんか最初にデザインの意匠設計とかいっぱい取ってて、今の研究会入って、でもなんか模型作りたくて、模型面白そうだなって思って、最初に建築の授業取って、そのあとに、すごい、空間まで操作するわけじゃん。もうちょい次の次元までありそうな気がして。
なんかね、そっちが一番頭すっきりする。なんか一番すっきりするなあ。
なんか今までずっと、もう、自分のやりたいことしかやってなかったから、こう欲求に従ってきたところ、今建築にいますみたいな。
でもね、いろんなことしたい。やっぱりね、色んなデザインがしたい。
色んなデザインがしたい、色んなデザインがしたいから、まあでも建築って資格が必要じゃん。そういった意味でもまず建築家になるみたいな。



道は長い。建築かなんて、いやだって30代だよ、ようやく。なんかようやく、名が売れるっていうか、ある程度名前が出てくるって。


ーね、大学院行ったらね。院にも行くつもりみたいな話だもんね。

行くつもり。道は長い。


でもなんとなく、そうやっぱり、自分の欲求に従ってねやっていってる。将来も絶対そう。それしかできない。ぽんこつなんで本当に。嫌いなこと絶対できない。


ー自分の欲求に従って生きるってのは気づいてたらしてたみたいな。

なんかその、やっぱり自分が何が好きかみたいの突き止めてくことが、すごい、好き。


そう。それが好き。で、だんだん、それがなんで好きかもわかってきて。そうするとなんか結局、あの、まあ自分がどういう人間か、自己認識的な。


ーそれはすごく大事なことですよ。

それに尽きる。
そう、でも、このインタビューの話もそれなんだよ。完全に。そう、自分の夢はどこからきてるのか。

だから、なんかその自分を認識するために。なんでものづくりだったんだろう、ね。で、結局、この先もずっと自己、自分探しの旅だ、ああ自分探しの旅ですよ。


ー人生は自分探しの旅。

本当に。けっこう自己中だからね。
そう、そんななかで、すんとけっこうピュアな場所がほしい。


ーおい続ける中で、一休みする空間というか。

うん。そう、小さい時からの記憶がある。


ーそれはその、引っ越したら場所が変わるかもしんないけど、多分また戻ってきちゃう。

多分また。


なんでものづくりなんだろう。あ、そう、なんか俺、目に見えてないと理解できないの。まあ理解できるけど、理解しにくいの。なんか、数学とかでも図形とかめっちゃ得意なの。でもこう数式になって、それがもう関係がわかんなくなって、リアルじゃなくなった瞬間、ちょっとねえ、だめなの。


ー虚数とかなに?みたいな。

わけわからん。わけわからん。
そう物理とかも目に見えたり、感覚的にわかることはすごいわかって。物理もなんとなく感覚でわかるじゃん、摩擦とかも。でも、化学とかわからない。


ーどういう結合しちゃったとか、目に見えないもんね。

そう。そうなんだよ。だから、こう感覚的な、手元系に、言葉とか考えで勝負するよりも、もう実際にものを見せてみたいな。そもそも俺言葉苦手だし、口上手くないし、手元に行くわけだ。なるほど。それで、やっぱもので見せる、もので伝える方が自分にとって楽なのかもしれない。
いやだって、そっちの方が結局早いとか思ってるしね。
そうだ。もので見せて伝えるってのが自分の中で、コモンなやり方なのかもしれない。それで、自分が好きなものをどんどん形にしていくことで、逆に自分が何が好きかを理解できて、こう自己認識、自己探求ができるわけだ。わかった。これからもそうやって生きていきます。


ーこの夢と宝物の関係で言うと、追いたいものは追いたいものとしてあるけど、たまに一休みするために。

そうだねえ。こう、自分から離れて自分を広げていく、自分をこう広げていく時と、1回きゅって元に戻るとこみたいな。


ーなんかそう、考え方みたいな、コアになってたり、したりはするの。

考え方は。
まあ、自分から離れすぎちゃうとやっぱ怖くなっちゃうから、1回もどっとこみたいな。


ちょっと自分の中で今まとまったわ。


ー言い残したことない。

まあ建築って言ったけど、ここだけの話。


ーここだけの話にならない。カットするならカットする。

普通にいや、もっと将来色んなことをやりたいなあって。こう自分の好きなものだけの映画とか、最高だよ。遺作だよ。映画一個。死ぬまでに映画作るわ。


それ、そんな感じ。
あと、これでも関係あるのか。なんか自分の中で、そうやっぱ二極端を大事にしようと思ってて。なんだろう、こう二極端て言うと。まあすごい、庶民的な、自分の中で庶民的な部分と、こうリッチになりたいみたいな願望ていうか、そういうもの、てかなんか二極端の世界があるじゃん。
そういうの両方知っといて、両方とも否定しないでみたいな。ていうのをこころがけてる。
いや本当に。そう。
なんだろうな。けっこういろいろあったんだよ。そう自分なんか、ちょっと、例えば理系か文系かって言われたらどっちもよくわからないの。


なんか必ず二極端あるじゃん。物事には。
そこの両面を知っときたいなって。例えば、まあ日本と海外とか、なんだろうあとは、まあデザインと例えばアートとか。そう、こう自分の好きなものでも二つあって、その幅の中で自分がいるみたいな。その幅の中で、こう自分がいるから、二極端を知ることで、自分の範囲を理解できるみたいな。


ーそれってどちらも知ってるって言えるし、どちらも知らないとも言える。

たしかに。知らないことまだいっぱいある。


ー多分こっちに突き止めてる人に見えてる風景は見えてないわけでしょ。こっちに突き止めてる人の風景も見えてないし、でもちょっとこの人と共有してる部分もあるし、この人と共有してる部分もあるし。この人に持ってない視点はこっち側にあるし、そんな感じがする。

そんな感じがするね。だからこっちが全てだと思わないようにしてる。そうだ。いいね。話すとまとまってくね。



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